16年前、心にキズをおったひとりの大学卒業生が故郷を離れ、南アフリカから三つのタイムゾーンをまたいで台湾へ降り立ちました。彼は、自分で模索しながら、伝説のユートピア、台東へ辿り着き、そして、この地で根付き、新しい人生を歩み始めたのです。

Mark Jackson

Markは、すぐに2003年の忘れられない出来事を思い出し、「僕は、4年間付き合っていたフィアンセと別れて…、ただただ悲しみに暮れていたんだ。大学を卒業したばかりで何もない状態だったから、それなら、いっそこの悲しみの土地から離れてしまおうと決意したんだ。」と話してくれました。しかし、なぜ、台湾だったのでしょうか。世界にはたくさんの国があるのに、なぜ、台湾だったのでしょうか。Markは笑いながら、ちょうど当時、台湾は核エネルギーの発展時期だったこともあり、核原料が安い南アフリカと密接な関係にあったこと、彼の父親が核エネルギー科学者で、よく台湾と南アフリカをビジネス旅行をしていたこと、そして何よりも、台湾で仕事をしているお姉さんが『台湾はいいところだ』と話していたことが、いつのまにか、彼に台湾という島で暮らして輝く生活を送るイメージを植え付けたと話してくれました。

人生の谷底でもがきながら、一生懸命にそこから這い上がろうとしたMarkは、すぐに台湾に行くことを決め、そのまま台東にたどり着くと、そこには驚くような出来事が待っていました。

「台湾に着いて、まず、台南の友達の友達に会いに行ったんだけど、その人がオンボロのバイクをくれて、しかも、台湾一周を勧めてきたんだ。そして、僕に、台東には絶対に行くべきだ!っていったんだ。」初めて『台東』の地名を聞いたMarkは、心が躍りました。どうしても台東がどんなに素敵で特別な場所であるかが知りたくて、たったひとりでオートバイに乗り、まずは墾丁に向かいましたが…、屏東の近くで迷子になってしまいました。「地元の警察が四方を護衛してくれて、2時間くらい一緒に走って、正しい道まで連れてってくれた。みんな。僕がちゃんと道に戻ったのを確認して、やっと安心してくれたんだ。」スリル満点な迷子の経験も、彼に台湾人の情熱と暖かさに触れさせ、Markは「台湾は本当にいいところだ!」

と実感させたのです。旅をしているうちに、心のキズも少しずつ癒されて行きました。なんと、やっと辿りついた台東の市内のメキシカンレストランに、大学の級友、Thomasがいたのです。まさか台東で友達と会えると思っていなかった彼らは、すごく興奮していました。そして、Thomasは、すぐにMarkを連れてバイクで海辺へゆき、台11線をまっすぐに走り続けました。富岡から小野柳までの少しの間、彼は、「両側に空高くのびた椰子の木、遠くから見える蘭山がまるでハワイのように見えて、思わず息を呑み込んでしまったよ!故郷の南アフリカにも、同じような風景があったな。あそこは海がすっごく綺麗な場所だったなぁ!」

その時Markは知っていた、ここだ、台東、彼が永遠に定着したい場所だ。

Mark Jackson

「こちらの人口構成が面白いのを発見した。漢人や原住民、そして私のような外国人がいた。天気はいつも晴れていて、ペースはゆっくりしていて、忙しくないところだった。治安もいいし、うちの子は都蘭の小学校の一年生だったから、安心して歩いて帰ってくれた」都蘭糖廠の筋向かいにWaGaLiGong wa延力共という異国料理のレストランをオープンし、マーク自身もサーフィンのコースを開設し、楽しい生活を始めてから十数年が経った。

「でも…」Markは少し思い口調で話し始めました。「唯一の問題は、周りの環境破壊がどんどん進んでいることだよ。僕が初めてここに来た時は、こんなのじゃなかった。」近年、Markが国外の友達を海へ連れて行った時に目にしたのは、綺麗なビーチではなく、四方八方に捨てられたゴミだったのです。変わり果てた姿にMarkは言葉も出ませんでした。しかし、民間でも、公共でも、みんなと一緒に海洋の生態バランスと環境保護をすれば、観光地としてもアピールできるだけでなく、台東の貴重な天然資源を守れると考えたのです。「もし、この場所が好きなら、この場所に関心を持つはずです。僕は、ずっとここで暮らして行きたい。だから、台東がもっともっと良くなることを願っているんだ!」

Markは、ビーチ清掃のイベントをたくさん開催したり、魚保護エリアを増やしたりすることを提案しました。「富山護漁区はとてもうまくいっていて、魚もどんどん増えてきている。」こと、そして、「西洋国家で今すごく流行っている有機永続のパーマカルチャー (Permaculture)は、大自然とどうやって共存していくか学べるから、試してみる価値があるね。」と話してくれました。台東のこの土地を心から愛しているからこそ、希望も大きくなるのでしょう。もし、台東がエコ先進国家Eco Countyを目標に努力をすれば、エコツーリズムEco Tourismとして国際的にもアピールできます。「外国の人々は、特にこういう概念が好きだからね。これもグローバルトレンドで、環境と向き合うためには、通らなくてはならないテーマなんだ。」Markは、10年後、20年後も、そして何千年、何万年後も、ピュアで美しい台東であり続けるように、台東に住むすべての人々と一緒に台東の自然環境を守り続けていきます。